不動産相続の対策の注意点とは?【法人化や相続税不動産の3年縛りについて徹底解説】
不動産の購入は相続税の対策になると言われてます。なぜそう言われているのか気になりませんか。この記事では、アパートやマンションのオーナーなどの賃貸業の方や会社を経営されている方に大変おすすめです。借入や、生前贈与についても紹介しているので、是非最後までご覧ください。
公開日 : 2021/01/18
更新日 : 2021/01/18
目次
不動産を相続する場合の対策の事例と回答とは?
現金の相続よりも不動産の相続の方が節税対策になると注目されています。実際に不動産を相続する場合の対策の事例としてはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは事例を用いながら詳しく解説いたします。
不動産を相続する場合の対策の事例
Aさんは現在79歳で、昨年奥様が亡くなり、娘さんが一人いるため、自分の年齢を考え相続税対策をそろそろ考える必要があると感じていました。Aさんはアパートのオーナーをしていますが、Aさんが所有するアパート2棟は計15世帯のうち、5つしか入居がない状態です。
借入の返済もあるためキャッシュフローがマイナスとなっていました。Aさんは入居率の低いアパートを娘さんに相続する場合の相続税がどれくらいになるのかを心配していました。今からでもできる節税対策はないかと悩んでいます。
さて、Aさんはこの不動産の相続に関してどのような節税対策をしたら良いのでしょうか?
不動産を相続する場合の対策の事例に対する回答
この事例の場合に行うべき対策は、アパートのリフォームをして入居率を高めるということです。
貸家の相続税評価は、入居率が高いほうが土地と建物の評価額が下がるため相続税が安くなるため、アパートなどの賃貸物件は、空室が多いと相続税は高くなってしまいます。リフォームをすることでアパートの入居率アップが見込めます。
さらに、リフォームは入居率のアップが見込めるだけでなく節税対策にもなるのです。リフォーム代を支払うことで現金という相続財産が減り、その分相続税を減らせます。また、増改築や種類変更を伴わない程度の場合は、建物の資産価値は上がりますが、固定資産税には反映されないため、建物の相続税評価額は変わりません。
このように不動産の相続に関する対策は様々なものがあります。詳しい不動産の相続の対策について説明していきますので、ぜひ参考にされてください。
そもそも相続税とは?
相続税とは、相続や遺言で遺産を受け継ぐ際に、遺産総額の金額が大きいと掛かってくる税金のことです。この記事では、不動産を相続した場合の対策方法について詳しく解説をしていきます。
不動産の購入は相続税の対策になるのか?
遺産相続の際に掛かってくる相続税を節税する方法として、賃貸アパートの購入が効果的とされています。その理由は、現金と比較した相続税上の評価額が低くなるということになってきます。
相続税が多額となるほど相続税率が高くなるので、さまざまな相続税対策を知っておくべきです。ここでは、支払う相続税を減らすための課税対象になる相続財産の評価総額を減らす方法について紹介をいたします。
不動産の購入は相続税の対策になる5つの理由
現金をそのまま相続するよりも不動産に変えた方が相続財産の評価総額を下げられる理由について解説をいたします。
理由1 土地の評価額が約20〜30%下がる
不動産を相続した場合は、実際に売買された実税価格とは違った基準価格が相続税を算出する基準となってきます。
土地の評価額では国税庁が決定している路線価が評価基準となる、時価の70%~80%程度が目安となるため、実際に支払った土地価格よりも20%~30%程度下げることができます。
理由2 建物の評価額が最大50%下がる
建物の評価額では一般的に固定資産評価額が利用されているため、最大で時価の50%程度まで下がることがあります。実際に支出した建築費の半分が評価額となる傾向にあります。
理由3 不動産を第三者へ賃貸する場合の節税効果について
土地と建物の評価基準額に加え、アパートやマンションなどの不動産を第三者へ貸す賃貸物件である場合は、評価額がさらに30%減少して節税に繋げることができます。この30%の減額割合のことを、借地権割合と呼びます。
理由4 小規模宅地の特例を適用
小規模宅地の特例を利用した場合も節税効果は非常に高く、宅地の種類と面積によって評価額の減額率が定められています。評価額が低くなる賃貸アパートの場合でも200平米を限度に土地の評価額が、定められたものよりも50%減少するので、非常に有効とされています。
理由5 親の名義で建物を建てることが可能
不動産を使った相続税対策では、特に賃貸物件の活用で節税になることが分かってくると思いますが、ポイントとしては土地の購入や建築では被相続人の現金を利用し親の名義で不動産を作ることが必要になってきます。
説明した相続税対策はあくまでも被相続人の財産を現金から不動産に変えて相続することが前提となっているので、子供の名義で建てたケースに関しては生前贈与に該当し、贈与税が発生します。
親名義で不動産を得ることが一般的には必要ですが、生前増の場合でも相続税対策として有効となるケースがあります。
本人の意思による物件取得かどうか重要になる【法人の場合は取得後3年の経過が必要】
個人で物件を取得すると、取得の際に相続財産は物件の相続税評価で評価がされるのが一般的であるため、相続発生の直前に購入をしたとしても評価減を図ることは可能です。例えば、余命3か月であっても、亡くなる前日にでも、取得したその日に相続税対策が可能になるということです。
もちろん、取得と契約だけではなく登記まで終わっていた方が良いので一定期間は必要となってきます。また、法人で取得した場合は不動産価格が相続税評価額で評価されるので、取得後3年間が経過していることが必要です。
ここで重要なのは、本人の意思によって物件を取得したという事実が必要です。相続開始直前に相続税対策がされた場合に、税務調査において税金逃れを疑われてしまう場合があります。
とくに世税宣告を受けた病人の方であれば、物件の取得が本人の意思で取得されたかが厳しく問われます。本人の判断力がない状態で相続税対策商品を購入したと判断された場合は、相続人の行為として否認される可能性もあります。
全室通常の賃貸借契約で満室の物件を選択する
単なる土地やマイホーム物件ではなく、収益物件を購入することで人に貸しているとされ相続税が大幅に評価が下げることがあります。
しかし、物件に長期の空室があった場合は空室の部分は人には貸されていないので、その部分は貸家建付地としての評価減が受けられません。
とくに相続直前に収益物件を購入する場合は、全室通常の賃貸借契約で満室である物件を選択しましょう。また物件購入後の運営中に空室が出ている途中で、相続は発生した際でもリフォームや募集活動を行えば一時的な空室として認められますので問題はないです。
国税庁の通達に関しては、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる」という範囲において
1・各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
2・賃借人の退去後に速やかに新たな賃借人の募集が行われたか
3・空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
4・空室の期間が課税時期の前後の1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
5・課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
これらの事実関係から総合的に判断することとされています。
不動産購入は借入をした方が相続対策になるのか
被相続人から相続人へ引き継がれる財産にはプラスの財産とマイナスの財産の2種類があります。それは、借入金などの負債です。相続税評価額はプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額となっています。
相続税対策を検討している場合は、不動産購入は借入をしたほうが節税になるということを良く聞きます。しかし本当に正しい情報なのでしょうか。
現金2億円で不動産を購入した場合の相続税評価額
相続財産 |
相続税評価額 |
プラスの財産:2億円で購入した不動産 |
1億4,000万円 |
マイナスの財産:- |
1億4,000万円 |
現金2億円を利用せずに借入金で購入した場合の相続税評価額
相続財産 |
相続税評価額 |
プラスの財産:現金2億円 2億円で購入した不動産 |
1億4,000万円 |
マイナスの財産:借入金2億円 |
1億4,000万円 |
相続税評価額に関しては、借入をしてもしなくても変わりはとくにありません。借入に関しては、結果は同じということです。不動産を購入する場合は、借り入れをした方が相続税対策となるなんてことはありませんので、注意するようにしましょう。
現金の相続と不動産の相続を比較するとどうなる?
ここでは、現金の相続と不動産の相続では節税効果がどのくらいあるか、現金2億円の相続を例にあげて、具体的な節税効果について紹介をしていきます。
現金をそのまま相続した場合
現金2億円を現金でそのまま相続した場合に、課税される相続の金額は以下となってきます。
2億円(相続税評価額)-3,600万円(基礎控除)=1億6,400万円
1億6,400万円×40%(相続税率)-1700万円(控除額)=4,860万円(相続税)
現金2億円を不動産に変えて相続した場合
また、現金2億円を不動産に変えて相続した場合はどうなるのかを説明していきます。現金2億円で不動産を購入し相続すると、不動産の相続税評価額は実税価格よりも下がるのが一般的とされています。
理由としては、現金を不動産に変更して相続すると相続税評価額は引き下げられることとなってしまいます。相続税評価額が購入価格の7割として算出すると、課税される相続税の金額は以下の計算となってきます。
1億4,000万円(相続税評価額)-3,600万円(基礎控除)=1億400万円
1億400万円×40%(相続税率)-1,700万円(控除額)=2,460万円(相続税)
現金を賃貸用不動産に変えて相続した場合
現金を賃貸アパートなどの不動産投資物件に変えた場合は、相続税評価額は下がります。下記において一例を紹介いたします。
6000万円で購入した 建物の評価額 |
固定資産評価額:50%に減少 借地権割合:70%に減少 6000万円×0.5×0.7=2100万円 |
4000万円で購入した 土地の評価額 |
路線価における評価額:80%に減少 小規模宅地の特例:50%に減少 借地権割合:70%に減少 4000万円×0.8×0.5×0.7=1,120万円 |
賃貸アパートの入居率を100%に設定して算出をしましたが、満室ではないと入居率に応じ評価額の減少率が下がるので注意するようにしてください。
不動産による相続対策のリスクや注意点とは?
不動産を活用して相続税の対策を行う方法は非常に幅広くあります。しかし、リスクや注意点があるのでご説明します。
まとまった資金がないと対策できない
不動産の相続税対策は節税効果が高いのですが、投資額も大きくなるのが特徴です。つまり、まとまった資金がないと対策は難しいといえます。不動産を活用した節税対策は、一般的に資金に余裕がある場合に行うと考えるようにしましょう。
借入をしてからの対策は意味がない
一昔前であれば賃貸マンションを購入するときは借金をして相続税対策を行うのが一般的とされていました。しかしバブル時代に不動産の時価が高騰して、相続税の負担が重くなった理由が挙げられます。
ただし相続税対策はできたとしても、バブル崩壊後にマンションの空室が目立ち、投資費用が回収が不可能となり返済に苦労してしまったというケースが起きてしまいました。
不動産の資産価値が高いと節税と不動産収入の獲得を同時に叶えられますが、場合によっては借金の負担が重くなってしまうケースもあります。借金をしてまで不動産を無理に購入することが正しいのかは、一度じっくりと検討するようにしましょう。
賃貸ならランニングコスト面でのリスクがある
購入したマンションを賃貸に利用するのであれば、あらゆるリスクを考える必要性があります。賃貸では空き部屋があると家賃収入が減ります。さらに、銀行借入を行い賃貸マンションを購入する場合は、返済期間がどうしても長くなってしまいます。
返済期間中に金利が上がってしまうと、返済額が増えて負担になってしまうので注意が必要です。他にも、自然災害や家賃滞納のリスクを考えることも必要となってきます。賃貸マンションを維持するためのコストにお金がかかるという問題は珍しいことではありません。
不動産が相続トラブルの元になる【揉めずに遺産相続をすることが大切】
不動産を相続すると遺産分割がうまくいかずトラブルのもととなってしまうことが多くあります。相続税を申告する場合は、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの特例があり、遺産分割協議がまとまると納税の負担を減らすことができます。
この特例を行かせるかどうかは納税額で大きく変わることもあるため、節税をするために遺産分割をすることが必要です。
生前贈与を利用する場合の相続税対策とは?
不動産を活用する以外に、生前贈与でも相続税対策は可能です。相続税との税率を比較して生前贈与を選択したり、非課税対象の制度を利用すれば節税となってくれます。
相続税の税率が高い場合には生前贈与を有効に活用できる
贈与税の一般税率について解説をいたします。贈与税の算出対象となり財産は1年間に取得した財産の合計額となるので、数年かけて財産を分割して贈与すると節税できる可能性があります。
基礎控除後の課税価格 |
200万円以下 |
300万円以下 |
400万円以下 |
600万円以下 |
税 率 |
10% |
15% |
20% |
30% |
控除額 |
‐ |
10万円 |
25万円 |
65万円 |
基礎控除後の課税価格 |
200万円以下 |
300万円以下 |
400万円以下 |
600万円以下 |
税 率 |
10% |
15% |
20% |
30% |
控除額 |
‐ |
10万円 |
25万円 |
65万円 |
相続税精算課税制度を利用する
非課税制度の一つとして、贈与財産は2500万円までが非課税対象となる相続時財産制度を利用することができます。基本的にそうぞ財産の種類における条件はないので、不動産の贈与でも利用できる場合はあります。
しかし相続時財産課税制度は、贈与税対策のための制度であり贈与税を控除されても相続時には課税財産の対象となり相続税が発生するので、実質的に納税を後回しにする形となってきます。
住宅取得資金贈与や教育資金贈与を利用する
また、特定の用途が指定された資金も非課税対象となってきます。
・住宅取得資金贈与:基礎控除額と合わせて最大で1,310万円まで非課税となってきます。
・教育資金の贈与 :基礎控除額と合わせて最大で1,610万円まで非課税となってきます。
教育資金の贈与については子供一人ごとの条件となるため贈与相手の子供が増えれば限度額も増額されます。しかし子供が30歳になるまで使い切れないようなケースでは、贈与税の課税対象となってききます。
配偶者贈与を利用する
贈与する相手によって非課税となる制度もあり、婚姻関係が20年以上となる夫婦の間で贈与があった場合に基礎控除額と合わせて2,110万円までの控除を認められています。
その他の相続税対策とは?
ここでは、不動産に関する相続税対策とは違う方法ですが、節税を期待できる対策方法について紹介をいたします。
死亡保険金の非課税枠を利用する
生命保険に加入していた場合に支払われる死亡保険金に関しては、非課税限度額というものが設けられています。一例としては相続人が配偶者と2人の子供である場合は、1,500万円までの死亡保険金が非課税対象となってきます。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
非課税財産になる墓地や仏壇を生前に購入する
相続税法では非課税財産が定義されていて、墓石や墓地などに関しても非課税財産として認められております。お墓にかかる費用は平均で100万円~200万円とされており、非常に大きな出費となるので、生前に購入をしておくと相続税対策になってくれます。
海外移住による相続税対策は条件が厳しい
海外移住をするなど特定の国へ移住をして財産を移すことで、相続税の支払いが全て免除される方法もあります。
しかし、この条件は満たすのが厳しい上、現実とはいえない制度であるので相続税を減らすための一つの方法として知っておくと良いでしょう。
過去の不動産の相続対策の事例とは?
ここまで不動産の相続対策について解説してきましたが、不動産の相続に関する事例として過去にはどのようなものがあったのでしょうか。ここでは具体例をご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
不動産の相続を有利に運びたいという相談
Mさん(60代の女性)は築35年の建物と土地に居住しています。所有者はMさんのご主人になっていますが、ご主人は1年半前に他界しました。お子様は2人で、2人ともすでに独立しています。
Mさんは、この土地・建物の売却を検討されていましたが、ご主人からの正式な相続の申告はしておらず、登記名義人はMさんのご主人のままになっています。Mさんは売却までの手続きの中で、できるだけ税金が安く済むようにしたいと考えていました。
ご主人の名義のままで売却する方が良いのか、Mさんが相続してから売却する方が良いのか、相談にいらっしゃいました。
不動産の相続を有利に運びたいという相談に対する回答
結果として、一旦すべての不動産を相続してから売却することが最も税金の節約につながると考えられました。相続で取得した不動産を売却する場合、相続税算定の参考となる「取得価額」は、「被相続人が取得した金額」です。
築35年の建物であれば、ご主人がこの土地・建物を買った当時の金額は低いものであったことが予想されるため、税金も低く抑えられます。また、この場合、建物を売却する際の所得税を軽減するためには、売却人がその建物に居住していることが条件となります。
そのため、現在住んでいるMさんが、一旦すべての不動産を相続してから売却することが最も税金の節約につながるのです。
不動産を相続する場合に対策をしておこう!
いかがでしたでしょうか。ここでは不動産を相続する場合の対策について紹介をいたしました。さまざまな方法があるため、一度に覚えることは大変だとは思います。しかし、とても大事なことなので、この記事を最後まで読んで参考にして頂けると幸いです。
不動産を相続する場合の対策について気になる方は税理士に相談することがおすすめです。当サイトでは不動産の相続について相談できる税理士を探すことができますのでお探しの方はご利用ください。