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赤字の場合の確定申告の方法とは?不要なの?【書き方や必要書類など紹介】

業績が悪く赤字だった場合は確定申告は不要と思ってはいないでしょうか?確かに確定申告は不要ですがそれで決めつけてしまうのは早いです。なぜなら確定申告をしないことによってデメリットがたくさん発生してしまうからです。デメリットを避けたい方達のために、赤字の場合の確定申告の方法を紹介します。

公開日 : 2021/02/11

更新日 : 2021/02/11

目次

赤字の場合の確定申告でよくある事例とは?

赤字の場合は、「所得税がかからないの確定申告を出さなくていい」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、たとえ赤字だとしても、確定申告を出した方が多くのメリットがあります。

 

本記事では、事例を交えて、赤字の確定申告について解説します。

今年度の業績が悪くて悩んでいるAさんの場合

Aさんは、サラリーマンとして働いていましたが、脱サラして長年の夢であった飲食店の経営をはじめました。

 

しかし、今年度の業績は悪く、確定申告の時期が迫っています。赤字の場合、確定申告をどうすればいいのかわからないAさんは、企業仲間の友人に相談したところ「確定申告は赤字の場合は必要ない」と言われました。

 

しかし、本当に確定申告がないか心配なAさん。税務のスペシャリストではない友人に相談して良かったのでしょうか。

 

 

赤字の場合の確定申告の必要性は?

赤字の場合も、確定申告を出さなければいけないのでしょうか。

ここでは、確定申告を出さないことによるデメリットを解説します。

確定申告をしなとデメリットがたくさん発生する

確定申告は、税金を納めるためにする申告です。そのため、所得がなければ課税されることもないので、確定申告の義務はありません。

 

そのため、赤字だった場合に確定申告をしなくても大丈夫です。

 

しかし、確定申告をしなかった場合、様々なデメリットがあります。

 

まず「確定申告書」という書類が手に入らないことです。確定申告書が手に入らなくて起こる問題としては、住宅ローンなどがあります。ローンの審査を受ける場合は、過去数年分の所得証明書類の提示が必要ですが、その書類がないことになってしまいます。

 

また、事業資金の融資を受ける際も、所得証明が必要になります。個人事業を法人化したいと思った際に、所得証明ができずに融資が受けられない、ということが起きてしまいます。

 

また、個人事業主は国民健康保険に加入していますが、所得がない場合は、国民健康保険料が大きく優遇されます。

しかし確定申告をしていない場合、所得がないことを証明できないため、保険料の優遇が受けられず、高い健康保険料を支払うことになってしまいます。

 

このように、確定申告をしなかった場合、様々なデメリットがあります。

 

 

 

 

所得には赤字が出るものと出ないものがある

所得には、その職業や種類のよって、10種類の所得に区分されています。その区分の中には、赤字が出る所得と赤字が出ない所得があります。

 

ここでは、赤字が出る所得について解説していきます。

赤字が出る所得と出ない所得

10種類の所得の区分の中には、サラリーマンとして働いた対価としてもらう「給与所得」など、赤字が出ない所得があります。

 

一方、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」など赤字が出る所得もあります。

 

それでは、それぞれの赤字が出る所得について、詳しく見ていきましょう。

 

 

不動産所得

不動産所得とは、不動産の貸付によって得る所得のことです。アパートを所有し、それを賃貸として貸し付けて利益を得た場合は、不動産所得です。

 

しかし、事業として不動産を販売している場合は、不動産所得ではなく「事業所得」となるため、注意が必要です。

 

事業所得

事業所得とは、事業を行うことによって得る利益のことです。小売業や製造業などが該当します。一般的に、個人事業主という場合は、この不動産所得や事業所得がある人のことをいいます。

 

 

山林所得

山林所得とは、山林を伐採することによって得た利益や、山林を譲渡することによって得た所得のことです。山林を所有して5年超経過した場合に該当します。

 

5年以内に山林の伐採や譲渡によって利益を得た場合は、事業所得や雑所得として扱われます。

 

譲渡所得

譲渡所得とは、自分の所有している土地や建物、骨董品などの資産を譲渡することによって、生じる所得のことです。譲渡所得は2つに分かれていて、土地や建物を譲渡した場合の分離課税方式と、宝石や骨董品などを譲渡した場合の総合課税方式があります。

 

このうち、赤字が発生する所得は総合譲渡所得と分離課税所得ともに該当します。

 

 

 

個人事業主の確定申告

個人事業主は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の収入と支出を計算し、所得があれば、その所得の金額に応じた所得税を支払う必要があります。

 

たとえ赤字だったとしても、確定申告をすることによりメリットを得られますが、青色申告と白色申告では得られるメリットの大きさが変わってくるので、確定申告をする場合は、青色申告をしましょう。

 

青色申告と白色申告の違い

確定申告をする場合、青色申告と白色申告の2種類があります。では、その2つはどのように違うのでしょうか。

 

ここでは、青色申告と白色申告の違いを解説します。

青色申告のメリット

青色申告は、複式帳簿の帳簿の必要があるため、白色申告に比べて難しくなっています。しかし、その分青色申告にしかないメリットがあります。

例えば、青色申告では最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。また、赤字額を3年間繰り越せることや、貸倒引当金を計上できるなど、経費を増やすことで、所得を下げることができるのが、青色申告のメリットです。

 

赤字でも確定申告をすると発生するメリット

所得がない場合は、確定申告を行う義務はありませんが、確定申告をすることで様々なメリットが得られます。

 

ここでは、確定申告をすることによって得られるメリットについて、解説します。

損失申告により赤字の繰越ができる

赤字の確定申告をすることによって、得られる最大のメリットは「損失の繰越ができる」という点です。

損失の繰越とは、今期に発生した赤字を翌年以降にも持ち越すことができ、例え次の年に多くの黒字が出たとしても、黒字部分を持ち越した赤字で相殺することができ、課税所得を少なくすることができます。

 

課税所得を少なくすることで、所得税を減らすことができます。この赤字の持ち越しは、青色申告の場合は3年間持ち越しできますが、白色申告では赤字の持ち越しはできないので注意しましょう。

 

 

 

純損失の繰越控除による節税ができる

具体的に例をあげながらみていきましょう。

 

令和元年の3月15日が期限の確定申告で、100万円の赤字が出たとします。その場合、その赤字は翌年に持ち越されるので、翌年の令和2年に150万円の黒字だった場合、持ち越した赤字の100万円と相殺され、課税対象額は50万円のみです。

 

しかし、赤字だったからと確定申告をしていなかった場合は、赤字の持ち越しができないため、令和2年の黒字額150万円全てに税金がかかってしまいます。

 

純損失の繰戻しによる還付金を受け取ることができる

赤字の持ち越しと同じ考え方で、前年以前の黒字を今年の赤字と相殺する「繰戻し」という制度もあります。前年の黒字の分の税金は、すでに払ってしまっているので、繰戻しを行った場合は、「還付金」という形で納めた税金が戻ってきます。

 

この繰戻しは、赤字の持ち越しと同時には行えません。前年の黒字と相殺し還付金を受け取るのか、それとも赤字を持ち越し、来年以降の黒字と相殺するのかは、その都度判断する必要があります。

確定申告をしないことで発生するデメリット

確定申告をしなかった場合、得られるメリットがないだけでなく、様々なデメリットもあります。

ここでは、確定申告をしなかったことで発生するデメリットについて、解説します。

所得の証明書類が手に入らない

確定申告をしなかったデメリットとしてまずあげられるのが、「確定申告書」という「所得証明の書類が発行されない」ということです。

所得の証明は、住宅ローンを組む際に必要です。確定申告書は、国が認めた所得の証明です。そのため、ローン会社がローンを組むかどうかの判断をする際に、とても信用できる判断材料です。

 

この所得証明が準備できない場合、収入の安定性が判断できず、厳しい審査結果に終わってしまう可能性が高まります。

 

 

非課税証明書が発行できない事による不利

 

2つ目のデメリットは、「非課税証明書が発行できない」ということです。非課税証明書は、住民税が課税されていないことを証明する書類で、確定申告をしないと発行できません。

 

この書類がなくて困ることは、この書類が児童手当の申請時に求められたり、保育園の入園の申請などに求められることです。

 

たとえ、今はお子さんがいないとしても、数年後に子供が生まれ、「仕事が乗ってきたのに子供を保育園に入れられない」ということがないように、今から将来を考えておきましょう。

 

 

国民保険料が増える

確定申告をしないことの3つ目のデメリットとしては、国民健康保険料の支払額が増えるということです。

 

赤字の確定申告をし、所得がなかった場合は、国民健康保険料は優遇され安くなります。しかし、確定申告をしないことで、例え赤字でも所得がなかったことを証明できないので、国民健康保険料の優遇処置を、受けることができません。

赤字の場合の確定申告の書き方

ここまで、赤字の確定申告をすることで得られる、様々な利点をみてきました。それでは赤字の確定申告はどのように書けばいいのでしょうか。

 

ここでは、赤字の確定申告の書き方について、解説します。

確定申告で損失申告するのに必要な書類

確定申告で損失申告をする場合、通常の書類である

 

  • 申告書B第一表
  • 申告書B第二表

 

にプラスして「申告書B第四表」というものが必要になります。

 

また、特別な損失をした場合には、以下のそれぞれに対応した書類を用意する必要があります。

 

  • 被災者事業用資産の損失→申告書付表(東日本大震災の被災者の方用)
  • 上場株式等に係る譲渡損失→確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
  • 特定投資株式に係る譲渡損失→確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除用)
  • 先物取引・FXに係る損失→申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

赤字が出た年の確定申告書Bの書き方

申告書B第二表は、赤字の場合も通常の確定申告と同じなので割愛しますが、申告書B第一表は、赤字の場合は通常の場合と少し違うので、解説します。

 

申告書は、国税庁のHPからダウンロードできますので、参照しながら読んでみてください。

申告書B第一表の書き方

それでは、申告書の記入を進めていきましょう。

申告書に記入すべきことは、下記の7項目です。

 

  1. 住所、氏名、マイナンバーなど必要な情報を記入
  2. 「種類」欄の「青色」と「損失」に○
  3. 「収入金額等」欄に、自分の収入を記入
  4. 「所得金額」欄に収入から経費・青色申告特別控除額などを引いた金額を記入。赤字の場合は頭に△をつけて記入
  5. 「所得から差し引かれる金額」欄に各種所得控除額を記入
  6. 「税金の計算」欄に各種対応する金額を記入。
  7. 算出された納税額がプラスであれば㊼に記入、マイナスの場合は㊽に記入

申告書B第四表(損失申告用)の書き方

次に、申告書B第四表(損失申告用)の書き方をみていきましょう。

こちらも、国税庁のHPからダウンロードできますので、参照しながらみてください。

 

まず、表一に氏名と住所を記入します。

その後、下記項目に、赤字額を転記していきます。

【表一】

  • 「1 損失額又は所得金額」の「59」欄
  • 「2 損益の通算」の「59」欄
  • 「71」欄

次に表二の記入に移ります。表二に記入することは1つしかありません。

「3翌年以降に繰り越す損失額」の「72」の欄に赤字額を記入します。

書類の記入は、以上で終了です。

繰戻しによる還付金請求書の書き方

続いて、繰戻しの還付方法について解説します。

「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」も国税庁のHPからダウンロードできます。

記入するところは、下記の9項目です。

  1. 書類の提出日や、住所、氏名、マイナンバーなどを記入
  2. 「純損失の金額の生じた年分」「純損失の金額を繰り戻す年分」にそれぞれ対象の年を記入
  3. 提出年の赤字となった所得を、2欄と5欄に記入
  4. 前年の確定申告書の26、27、40欄の金額を、それぞれ「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」の7、10、14欄に記入
  5. 15欄に、前年の黒字と提出年の赤字を相殺した所得金額を記入
  6. 18欄に、15の金額に応じた税率をかけて算出した税額を記入
  7. 22欄に10から18を引いた、還付されるべき金額を記入
  8. 22を「還付請求金額」に記入
  9. 還付金を振り込む口座を指定

確定申告の期限を過ぎてしまった場合【税理士に相談】

この記事を読んでいる方の中には、過去に赤字の申告をしていなかった方もいるでしょう。そんな場合は、「期限後申告」ができます。

 

期限後申告では、繰戻しの還付金申請はできませんが、赤字の繰越をすることは可能です。ただし、細かい部分は個別の判断が必要なケースもあるので、何かわからないことがある場合は、税務のスペシャリストである税理士に相談しましょう。

純損失金額の繰戻し(準確定申告)過去の事例

ここまで、赤字の確定申告について解説してきました。

 

純損失金額の繰戻しを実際に事例でみてみましょう。

事業収支が赤字となったが、確定申告をしなくてもよいか?

準確定申告とは、亡くなった人の生前における確定申告のことです。

相続人が準確定申告を行った場合、事業収支は赤字でした。その場合、確定申告はしなくていいでしょうか。

 

この場合も、確定申告はした方が良いです。今回の場合は、準確定申告を行うことで、その年の赤字を前年の所得金額から控除し、税金の還付を行うことができます。

 

ポイントを紹介

今回の事例のポイントは、被相続人が前年と前々年に青色申告を行っていた場合、相続した年に発生した損失については、前年の所得税から繰戻しができる点です。

 

「赤字でも確定申告をした方が良い」という顕著な事例です。

 

 

どんな時も確定申告はした方が良い

このように、例え赤字だったとしても、確定申告をすることのメリットは数多くあります。

 

これを機に、赤字だから確定申告をしないということはやめ、毎年しっかりと確定申告をするようにしましょう。

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