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法人税の減税はなぜ行われたのか? メリットは企業だけでなく日本にも

2018年を始め、平成の30年間で法人税の段階的な引き下げが行われました。法人税の減税は企業が長期的な成長を目指す大きな支えとなりますが、具体的にはどのような制度が関わっているのでしょうか。減税のメリットに加え、日本と世界を取り巻く法人税の現状と、消費税や所得税との気になる関係まで解説いたします。

公開日 : 2021/02/13

更新日 : 2021/02/13

目次

法人税を減税するメリット

日本では、資本金の規模が1億円を超える企業に対し、2015年度まで25.5%の法人税率が課されていました。これは、先進諸国に比べ高い数値であり、海外へと本拠地を移す企業も少なくありませんでした。

 

これを受け、国内からの企業流出を防ぐために法人税率は段階的に引き下げられ、2018年度以降は23.2%に設定されています。

 

このような法人税の減税のもたらす様々なメリットについて詳しく見ていきましょう。

企業の長期成長の援助

法人税を減税すると、その分法人は支払う税金が減るため、手元に資金が残ります。

手元に資金が残ることで、法人は経営状況が良くなります。

 

日本の経済は、中小企業に大きく支えられているため、法人税を減税することは、国内経済全体によっても良い影響を及ぼします。

対日投資の増加

近年は、ビジネス領域におけるグローバル化が進んでいます。様々な国に事務所や工場を持つ多国籍企業の存在は、今や珍しくありません。

 

海外に進出しようとした場合、1つの判断材料になるのが、法人税率です。

例えば、アメリカの会社がアジア進出を考えた場合、税率が17%のシンガポールと、税率が約23.2%の日本のどちらに進出するでしょうか。

 

 

もちろん法人税率は1つの要因なので、これだけで全ての判断はできませんが、もし他の条件が全て同じだった場合、その法人はシンガポールに進出するでしょう。

企業としては、なるべく税率が低い国に進出した方がいいのです。

 

そのため、法人税率を減税することは、海外企業の対日投資を増やし、日本経済に良い影響を与えてくれます。

「法人税のパラドックス」による税収増

「法人税のパラドックス」という言葉があります。

一般的に、法人税を減税することで、法人が国に払う税金の金額は減少するので、国の税収入も減少すると考えられます。

 

 

しかし実際には、法人税を減税した方が、国の税収入が上がるというパラドックスです。

 

実際に各国が法人税を減税を実施したところ、税収が増えていたということがあります。

この理由として、法人税率の減税によって海外企業の投資が増えたことや、たまたま各国が法人税を下げた時期が多くの企業の利益率が増加した時期と重なったことなどが考えられています。

 

このような背景から、税収入の増加のため、法人税の減税が行われています。

法人税は30年ほど減少傾向にある

平成の30年間で、日本の法人税はかなり引き下げられました。

 

平成元年の日本の法人税率は、40%もありました。その後平成の間に、7回も段階的に引き下げられ、法人税率は23.2%まで下がりました。

 

しかし、もともとの日本の法人税率は高かったため、これでも世界的にみて法人税は低いわけではなく、やっと世界のスタンダードに入ることができた程度の税率となっています。

 

 

法人税は減税されるが課税ベースは見直し

近年の流れの中で、法人税は大きく引き下げられました。しかし、企業が納める税金は、法人税だけではありません。

 

課税の対象となる所得を課税所得と呼びます。たとえ法人税が減税され、国に支払う法人税が下がったとしても、その課税所得が多くなってしまえば、多くの所得税を支払う必要があります。

 

このように、国は法人税の減税で減った税収を、課税所得ベースの税収で補えるような制度改正を行なっています。

欠損金の繰越控除制度

国が課税所得ベースで税収を補うために改正している制度が、欠損金の繰越控除です。

 

以前までは、法人が赤字になった場合、その赤字金額を翌年以降に持ち越し、翌年以降の所得から赤字金額を差し引けるようになっていました。

 

その繰越控除制度は、不景気の期間が長年続いたため、繰越控除できる年数も5年から7年、9年、10年と延長されてきました。

しかし、2015年度の税制改正からこの方針を転換し、大企業においては、繰越控除の制度が制限されるようになっています。

 

2020年現在では、各事業年度の所得の50%までしか繰越控除制度を使うことができなくなっています。そのため、毎年最低でも所得の50%に対しては、所得税を支払わなければいけなくなっています。

外形標準課税の拡大

課税ベースでの税収を増やすために、「外形標準課税」の拡大も行われています。

外形標準課税とは、法人事業税の一種で、資本金が1億円を超える法人に適用される税制です。

 

法人事業税の計算をする場合、課税所得をベースに計算する「所得割」が基本です。それに加えて、外形標準課税が適用される法人には、資本金などの額をベースとする「資本割」、所得に給与や支払い利子を足した「付加価値割」も課されます。

 

近年の税制改正では、法人税の税率を引き下げていますが、これらの「資本割」と「付加価値割」の税率を引き上げています。

所得割は所得が赤字であれば発生しませんが、「資本割」と「付加価値割」は所得が赤字であっても発生するため、外形標準課税が適用される大企業では、税の負担が大きくなりました。

 

租税特別措置法に関する見直し

課税課税ベースでの税収を増やすために行なっているもので、「租税特別措置法」の見直しも行われています。

 

租税特別措置法とは、時限立法として、その時の政策に対応し機動的に税制を改正するために使われます。

 

例えば、「生産性向上設備投資促進税制」は、先端設備や生産効率の高い設備に投資を行なった場合、特別償却や税額控除を受けられる税制でした。しかし2017年3月末でこの制度は廃止となり、特別な税額控除などがなくなって、課税所得ベースでの納税金額が高くなっています。

 

 

様々な租税特別措置法

前述した租税特別措置法は、様々なものがあります。

 

例えば、「中小企業投資促進税制」では、機械装置などの設備投資を行なった場合、取得価格の30%の特別減価償却、または7%の税額控除を受け取ることができます。

 

 

「特定地域における雇用促進税制」では、特定地域において、フルタイムの無期雇用で労働者を新規雇用した場合、一定額の税額控除を受け取ることができます。

 

これらのように、租税特別措置法には企業の利益になるものが多くあるので、定期的に制度の確認をするようにしましょう。

赤字企業が多い理由とは

法人税は、全ての法人が支払わなければいけません。しかし、法人の所得が赤字だった場合は、法人税を支払わなくても良い場合があります。

 

赤字企業が生まれている要因とはなんでしょうか。

個人事業主の「法人成り」はなぜメリットがあるのか

法人の多くが赤字企業となってしまっている理由の1つとして、個人事業主の法人成りがあります。

 

法人成りとは、個人で行なっていた事業を、法人化し、その法人で事業を引き継ぐことです。

 

個人事業を法人化することにより、企業はメリットが得られます。

 

例えば、法人の場合、社長の給料(役員報酬)は給与所得控除が適用されます。また、配偶者や自分の子供を役員にして給与を支払うようにすれば、それぞれの給与にも給与所得控除が適用されます。

 

そのため、個人事業主として高い所得税を払うよりも、法人化して節税対策を行なった方が得になります。

 

したがって、所得が赤字となっている企業がとても多くなっているのです。

繰越控除制度の長期化

また、前述したように、繰越控除制度は近年長期化されていました。

最長で10年前までの欠損を、今年度の所得から差し引くことができます。

 

そのため、前年以前の欠損金額を調整し、法人税がかからないように金額を調整する企業が多く、結果として、赤字企業が多くなっています。

「効果的な節税対策」としての法人税

これらのように、節税対策を行うことで、企業が法人税を払うことの逃れる「法人税逃れ」は行えます。

もちろん、これらの行為は踏み入った内容ではありますが、法律の範囲内でのことです。

 

企業の利益を全て役員の給与として計上し、法人税逃れをすることは、税制の不備が引き起こしていることと言えるかもしれません。

法人税と関係する税

法人税に関する税金は、いくつかあります。

ここでは、法人税に関係する税について、解説していきます。

法人実効税率は「実際にかかる税率」

法人にかかる税金を考えた場合、法人の所得に対して、地方事業税や法人住民税、法人事業税などが課税されます。

 

これら所得に対する税、全ての割合を「法人実行税率」と言います。

法人実行税率の中には、地方税となるものもあります。

 

例えば、個人の場合、公共のサービスを受けるために住民税を支払います。しかし、法人もその地域に存在し、その地域の公共サービスを受けているので、法人住民税などを支払う必要があります。

 

地方税を下げることの効果

法人税には、国税と地方税の2種類があります。

日本の法人税は他国に比べて高いですが、それは地方税が高いからです。実際、国税としての法人税は、他国と比べてもそこまで高くありません。

 

そのため、地方税の見直しを行うことが、法人税全体の見直しに繋がるのです。

消費税増税との関係

日本の税金を考えた場合、真っ先に思い浮かぶのが消費税ではないでしょうか。

 

消費税は、消費するときにかかるだけでなく、流通や生産など、あらゆる場面でかかる税金です。そのため、生産者から消費者まで広く課税できる制度であり、広く浅く課税することができます。

 

 

一方、法人税は対象が法人だけに限られます。また、税率も23.2%と消費税に比べるととても大きいものとなっています。

そのため、法人税は、狭く深い課税制度と言えます。

法人税と消費税の割合の推移

日本では、税収の割合がここ30年間で変わりました。

 

バブル期の1990年は、全体の税収のうち、法人税の税収は18.4兆円で全体の税収の31%を占めていました。そして、消費税の税収は4.6兆円で、税収全体のわずか8%しかありませんでした。

 

しかし、2018年度の税収ではその立場が逆転し、消費税の税収は17.6兆円で全体の約30%、法人税の税収は12.3兆円で全体の約20%となっており、今では消費税の税収の方が法人税の税収を上回っています。

所得税とのバランスも重要

所得税と法人税は、日本の税収の大きな部分を占めています。このどちらの税金も企業の運営に関わる税金であり、あまり取り過ぎてしまうと、日本の雇用問題にも影響を与えます。

 

前述した、法人成りで所得税を回避している人がいることも踏まえて、法人税と所得税のバランスの取れた自制を構築することが重要です。

2020年以降も法制度と法人税は激動を迎える

今回紹介したように、日本では税制改正に取り組んでいます。

そのため、近年は法人税関係の改正はこまめに行われています。

 

そのため、常に法人税関係の情報にアンテナを張り、健全な企業運営を行なっていきましょう。

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