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決算賞与を支給するための3つの要件とは?損金計上するための注意点

決算賞与を支給するためには3つの要件があり、要件を満たしていなければ損金(経費)計上することができません。本記事では決算賞与を支給する要件に加えてメリット・デメリットについても徹底解説。決算賞与について深く理解し、節税に繋げましょう。

公開日 : 2021/02/16

更新日 : 2021/03/20

目次

決算賞与がもらえる人の要件とは?

決算賞与とは

決算賞与とは就業規則で定められている賞与とは異なり、会社の業績に応じて決算前に従業員に支給する特別賞与のことを言います。

 

決算賞与を支給する目的は、従業員への還元の為など会社によって様々ですが、決算賞与は会社の経費(=損金)にすることができ、節税対策にもなる重要な処理です。

 

ただし、経費として計上するには条件がありますので、その条件について解説していきます。

決算賞与の3つの要件

決算賞与を事業年度の経費として計上する為には、3つの要件を満たす必要があります。

 

この要件を全て満たさなければ、会社の経費として認められず、修正申告が必要になります。そうなると延滞税や加算税の対象になってしまいますので、注意が必要です。

 

これからご紹介する要件をしっかり確認して、決算賞与を経費計上していきましょう。

決算賞与要件① 賞与支給額について支給を受ける全使用人への通知

1つ目の要件は、事業年度終了日までに支給する従業員全員に対して各人別の賞与額を通知することです。

 

事業年度終了日とはその名の通り、事業年度の最後の日です。

会社によって4月1日〜翌年3月31日や1月1日〜12月31日などと事業年度を決定しますが、その事業年度が終わる日までに、賞与を支給する従業員全員に通知が必要であるということです。

 

例えば決算期が3月の場合には、3月31日までに決算賞与の支給を決定し、それを誰にどのように配分するかを定め、支給を受ける全従業員に通知を完了させる必要があります。

決算賞与要件② 事業年度終了の翌日から1ヵ月以内の支給

事業年度を4月〜翌年3月にした場合、翌年4月中に決算賞与を全額支給する必要があります。

 

決算賞与は事業年度内に支払っていない場合でも、未払で経費へ計上できます。

ただし、未払で事業年度終了日を迎えた場合、そこから1ヶ月以内には支払う必要があるという考え方です。

決算賞与要件③ 決算整理時に未払賞与として計上しなければならない

基本的には支給額を通知した日の属する事業年度内に経費算入する必要がありますが、他の決算賞与要件を満たす場合は未払賞与として経費計上することができます。

 

仕訳例としては以下の通りです。

<例>

【借方】賞与 100万円 【貸方】未払賞与 100万円

 

事業年度内に支給しているなら賞与/現預金、未払いなら賞与/未払金と帳簿に記載が必要です。

決算賞与要件の注意事項

決算賞与要件①に関する注意事項

「賞与支給額について支給を受ける全使用人への通知」の証明をするためには証拠書類を残すことが必要です。税務調査などで求められる場合があります。

 

賞与支給の通知は口答ではなく書面で行い、通知した全従業員から、通知を受けた旨のサインや印鑑を受領し、保管しておきましょう。

決算賞与要件②に関する注意事項

「事業年度終了の翌日から1ヵ月以内の支給」についても証明が必要です。

銀行振込であればそれが証拠となりますが、現金手渡しの場合は領収書を徴収し、保管しておきましょう。

 

また、決算賞与の通知どおりに支給しなかった場合は全額が未払賞与として経費計上できなくなってしまいます。

決算賞与の通知を行い、通知を受けた全従業員が問題なく賞与を受け取れば良いのですが、例えば通知を受けた後に退職などの理由で受け取れなかった人が1人でもいた場合、決算賞与の全額の未払計上が認められず、支給した事業年度の経費となってしまします。

決算賞与要件③に関する注意事項

例に倣って「決算整理時に未払賞与として計上」の証拠書類も必要です。

これは決算仕訳や決算伝票を保管し、税務調査で提示できるようにしておきましょう。

 

決算賞与は通知日が重要となりますので、日付の記載は忘れないようにしてください。

通常賞与との違い

通常賞与とは

通常賞与とは、一般的に夏と冬に年2回支給される賞与で、一般的にボーナスと呼ばれるものです。

 

基本的に会社ごとに設定される勤務成績に対する評価でその額が決定されることが多く、就業規則等に支給予定日などが記載されています。

 

対して決算賞与は就業規則に記載されず、夏と冬の支給とは別に決算期に支給されることが決定するため、従業員にとっては臨時ボーナスともみなされます。

通常賞与を支給することのメリット

メリット①従業員のモチベーションアップ

通常賞与は会社の業績や個人実績と連動させることが多いので、自分の頑張りが賞与の増加に直結するということになります。

従業員にとっては、賞与がある方が、ない会社よりも、やりがいを感じて業務に励むことでしょう。

 

ただし、賞与支給後は離職率が上昇する傾向があります。

賞与支給直後に人員が大きく変動するというのは、デメリットにもなり得るでしょう。

メリット②人件費のコントロールがしやすい

月給を簡単に変動させることはできませんが、賞与については基本的に会社側が支払額や条件を自由に設定できます。

ある程度業務成績と連動させておけば、会社や各従業員の実績によって支給額が増えた・減ったの説明がしやすいです。

決算賞与を支給する3つのメリット

1.1年の利益を確認してから経費にできる

会社として、決算賞与の支給を行う最大のメリットは節税ができることでしょう。決算賞与の費用は経費に計上することができますので、費用が増えた分所得が減少し、法人税を抑えることができます。

 

しかも決算時のタイミングで検討することができるので、利益額や利益率を確認した上で決算賞与支給の判断を行うことができます。

2.従業員のやる気が上がる

決算賞与を支給することで、支給される従業員のモチベーションアップに繋がります。

 

例えば課税対象となる利益が1000万円だとします。

決算賞与を支給しない場合、法人税率を40%とすると400万円が法人税として徴収されます。

 

一方で決算賞与を500万円支給した場合、利益は1000万−500万=500万円となり、法人税額は200万円となります。

会社の総合的な利益で見ると、支給した500万円も鑑みて、決算賞与を支給した方が損しているように見えますが、200万円も節税した上で従業員のモチベーションを大幅に上げ、更なる売り上げ向上・離職率の低下を期待することができます。

 

予期せぬ利益が出て、それを納税するよりも、従業員に還元した方が長期的に見てメリットが大きいです。

 

また、支給する従業員全員に通知は必要であるが、成績が良かった一部の従業員だけに賞与を支給するケースもあります。

3.優良企業として評価される

賞与があるかないかでは企業の印象がまったく違います。

決算賞与を支給できるということは余力資金があり、かつ利益がしっかりでている優良企業の証です。

 

就業規則に賞与支給基準を記載することで、更なる人材や仕事の獲得に繋がります。

決算賞与を支給する3つのデメリット

1.内部留保資金が減る

決算賞与によって納める法人税の総額は減りますが、従業員に支給する総額が法人税の減少額を超えることで、結果として支出額が多くなる場合があります。

 

しかしここは「2.従業員のやる気が上がる」でも説明したように、支給した方が長期的に見てメリットがあるという見方もありますので、適切に判断しましょう。

 

あまりにも支出額が大きくなってしまう場合は、支給額の調整などを行いましょう。

2.賞与額で業績の善し悪しがわかる

基本的には業績の良し悪しで賞与の有無・金額が変わります。業績が良ければ賞与額は上がり、逆に利益が出なければ賞与額も低くなり、支給自体されないというパターンもあります。つまり、賞与が出ない時は業績が悪く、先行きが不安とみられるのです。

 

ただ、功績の差や、役職や等級などで賞与額に違いがある会社もあるので、賞与が出ないからと言って一概に業績が悪いというわけではない場合もあります。

3.賞与がでるのが当たり前になる

決算賞与の支給は従業員のモチベーションアップに効果的と触れましたが、逆にモチベーションを低下させるリスクもあります。

 

業績が良く、決算賞与の支給が継続的にできるなら良いのですが、業績が悪化し、支給額が減ったり無くなったりすると、その瞬間からモチベーションダウンに繋がります。

 

特に従業員の立場からすると、一度支給されると次年度以降も貰えると期待してしまい、貰えなかった年は必要以上にモチベーションが下がってしまう恐れがあります。

中には会社の将来に悲観的になる従業員も出てきて、離職率の上昇に繋がることもあるでしょう。

決算賞与の金額の決め方

決算賞与の平均値

企業の方針や業績によって変わりますが、夏賞与平均38万円、冬賞与38万円(厚労省「毎月勤労統計調査」令和元年9月分、平成30年2月分)とすると、決算賞与の平均支給額は30万円~40万円が一般的です。

 

しかし、決算賞与の支給額は基本的にどの会社にも定められていません。

法律的に定める義務はありませんし、業務成績によって支給額を決めている企業もある為、会社毎に支給額や有無が変わるというのが結論です。

決算賞与にかかる税金や保険料

賞与からは毎月の給与と同じように、所得税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳~64歳)の5つの税金や社会保険料が引かれます。

唯一、住民税は引かれることはありません。

 

ボーナスの手取り金額の目安は、ボーナス支給額に0.8をかけると算出できます。

一般的にボーナスの手取り金額は、支給額の75%〜85%と言われている為です。

 

実際のボーナス手取り金額の計算方法としては以下の通りになります。

 

<計算式>

ボーナス支給額−(所得税+健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料+介護保険料(40歳~64歳))=ボーナス手取り金額

 

ボーナスの手取り金額は、支給額から各種控除額を引くと計算することができます。

 

では、以下の条件の場合のボーナス手取り金額の計算過程を紹介していきます。

・20代男性

・扶養人数1人

・ボーナス30万円支給

・前月の給与額21万円

・組合は協会けんぽ

 

※ボーナスの支給回数が年4回以上の場合、計算上ボーナスではない扱いになるため、社会保険料の計算方法は異なってきます。

ボーナス手取り金額の計算方法①健康保険料

30万円×9.87%×1/2=14,805円

 

<計算式>

健康保険料=ボーナス(※1,000円未満は切り捨て)×健康保険料率×1/2

※健康保険料率は加入している組合や勤務地によって異なるので、加入組合HPで確認してください。

ボーナス手取り金額の計算方法②厚生年金保険料

30万円×18.3%×1/2=27,450円

 

<計算式>

厚生年金保険料=ボーナス(※1,000円未満は切り捨て)×厚生年金保険料率(18.3%)×1/2

ボーナス手取り金額の計算方法③雇用保険料

30万円×0.3%=900円

 

<計算式>

雇用保険料=ボーナス×0.3%

※雇用保険料率は毎年変わる可能性があるので、厚労省のHPを確認しましょう。

ボーナス手取り金額の計算方法④所得税

30万円−(14,805円+27,450円+900円)×2.042%=5,244円

 

<計算式>

所得税={ボーナス-(健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)}×賞与に対する源泉徴収税率

※源泉徴収税率は、前月分の給料や扶養人数によって変わります。詳しくは国税庁の公式HPから確認してください。

ボーナス手取り金額の計算方法⑤ボーナス支給額から控除額を引く

最後に、ボーナス支給額から算出された控除額を引きます。

 

30万円−(14,805円+27,450円+900円+5,244円)=251,601円

 

ボーナス手取り金額は251,601円と算出することができました。

 

控除額は、扶養人数や前月給料、加入している組合によって変わりますので、都度確認するようにしましょう。

決算賞与の要件を深く理解して節税をしましょう

いかがでしたでしょうか。決算賞与は節税や従業員のモチベーションアップなどといったメリットが大きいです。しかしその反面、従業員のモチベーションを左右したり、総合的に見たお金の動きを考える必要もありますので、要件をしっかり理解した上で、使用判断を下すようにしましょう。

 

また、法人税等の金額の確定は事業年度終了後になるので、その金額を確認した上で決算賞与の支給を検討しても間に合いません。節税対策として決算賞与を支給する場合は、予め事業年度内に税金がどれくらい発生するかを予測し、支給の決定を行う必要があります。
 
適切な賞与の支給を行うために、是非税理士へ相談してみましょう。
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